今回のお話は、込み栓のお話
完成してしまうと見えなくなってしまう部分にこそ、住まいが長持ちしたり、丈夫な構造にすることができる工夫が隠されていますが、土台と柱を繋ぐ「込み栓」もそのひとつ。現在の木造住宅では金物の使用は大切な要素ですが、木組みをおろそかにせず、金物だけに頼らない木材の加工技術も必要です。
さて、その樫の込み栓とやらは・・・?
土台まわりの在来工法の構造は、ふつうですと土台材木の成(高さ)の半分だけ柱のほぞを差込み、外周部分のみ金物補強をします。ピノキオ工房では、土台のほぞ穴は下まで貫通させ、ほぞを通したあと横から樫の込み栓を打ち込みます。過去の実物大実験データによると、4寸角桧柱、桧土台、桧の込み栓においての引き抜き強度は約500kg。一箇所あたりではそれほどではないかと感じるかもしれませんが、1階の柱は50〜60本程度使用しますから、強度的にはかなり期待できる数値ではないかと思います。そのうえで、法規上必要な金物補強をするのでかなり丈夫な構造といえます。込み栓は金物などない時代の手法で、木材同士を緊結させるために多用されてきましたが、金物の普及と木材加工の簡素化で社寺建築などで見ることがある程度です。私たちも丈夫で長持ちする家づくりを行うにあたり各種金物を使いますが、根本的にはそればかりに頼らない木組みを心がけています。
なにしろ4寸(約12センチ)の土台を貫通させるので、建て方の時には柱を立てるだけでも本当に大変です。ほぞに油を塗っても1本の柱で6〜8回木槌(自作の木槌で10kgくらいある重いもの)で打ち込みますので体力的にはかなりハードです。朝から建て方がはじまると、昼ごはんにハシをもつ手が震えるくらいです(笑)でも、柱を立てて桁を組み、梁をわたしていくと金物を使用せずとも桁、梁の上を歩いていけるくらい揺れません。自分の命もかかっているので木材加工も慎重になるのでしょうか(笑)